弁護士コラム

遺産分割協議を10カ月以内にすべき理由

2025.09.10
遺産分割協議を10カ月以内にすべき理由

吹田市・江坂にある大永法律事務所には、「遺産分割の具体的な進め方を知りたい」「相続トラブルを避けるための注意点は?」といった様々なご相談が寄せられています。

そこで今回は、遺産分割協議を10カ月以内にすべき理由について、分かりやすく解説していきたいと思います。

遺産分割協議を10カ月以内に行う理由と注意点

遺産分割協議には期限や時効がありません。
しかし、相続に関する手続きには、次で挙げるようにさまざまな期限・時効が設けられているため、早めに協議を行う必要があります。

1.相続税の申告と納付の期限

遺産分割協議を10カ月以内に行うべき最大の理由は、相続税の申告・納付期限にあります。
相続税の申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があり、期限内に遺産分割が完了していない場合でも、法定相続分に基づいて暫定的な申告を行わなければなりません。なお、暫定申告では、配偶者控除や小規模宅地等の特例といった税制優遇措置を適用できないことがあります。

もしも納付期限が過ぎてしまった場合は、以下のような不利益が生じる可能性があります。

  • 過大な相続税の納付(延滞税や無申告加算税、重加算税など)
  • 税制優遇措置の適用漏れ
  • 後日の修正申告や更正の請求による手続きの煩雑化
2.相続放棄・限定承認の期限との関係

相続放棄や限定承認を行う場合、相続開始を知った日から3カ月以内に手続きを完了する必要があります。
なお、3カ月を過ぎると原則として単純承認となり、被相続人の債務も含めて相続することになります。

早期に遺産分割協議を行うことは、以下のようなリスク回避にも繋がります。

  • 予期せぬ債務の発見
  • 相続財産の価値変動への対応
  • 相続人間の利害調整の時間確保
3.相続登記の義務化への対応

2024年4月1日から、相続による不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記をすることが義務化されました。
遺産分割協議を早めに完了させることで、余裕を持って相続登記に対応できるというメリットがありますが、期限までに遺産分割協議がまとまらない場合は「相続人申告登記」という暫定的な措置で対応することができます。

早期の遺産分割協議によるメリットには、以下のようなものがあります。

  • 相続登記を一度の手続きで完了できる
  • 登記費用の節約
  • 不動産取引を円滑に進めることができる
4.預金・株式の権利消滅リスクの回避

遺産分割協議が長引くと、預金や株式に関する権利が消滅するリスクがあります。

■預金の払戻請求権
権利を行使できることを知った時から5年、または預金の存在を知らない場合も権利を行使できる時から10年で消滅時効。

■株式の権利
株主への通知が5年間届かず、かつ配当を受領しなかった場合、所在不明株式として売却される可能性がある。

預金・株式の権利に関して、具体的には次のようなリスクが考えられるため、遺産分割協議は早めに行うことをおすすめします。

  • 預金の払戻不能
  • 株式の強制売却
  • 相続財産の減少
5.特別受益・寄与分の主張期限

相続開始後10年が経過すると、特別受益や寄与分の主張ができなくなります。特別受益と寄与分を考慮した遺産分割を望む場合は、期限までに協議を終える必要があります。

■特別受益
一部の相続人が、被相続人から生前に受け取った財産のこと。

■寄与分
被相続人の療養看護や事業の手伝いなどで貢献した人が、相続分に加えて受け取ることができる遺産のこと。

公平な遺産分割を行うためには、以下の点に注意することが重要です。

  • 特別受益の適切な評価と考慮
  • 寄与分の正当な主張と認定
  • 相続人間の公平性の確保
6.その他の重要な期限

遺産分割協議を早期に行うことで、以下のような権利の時効を防ぐことができます。

  • 死亡一時金の受取権:2年
  • 生命保険の受取請求権:3年
  • 共同相続人による遺産取得の時効:10年または20年

死亡一時金や生命保険金を確実に受け取り、遺産の不当な占有を防止するために、早めに遺産分割協議を行うようにしましょう。

遺産分割協議が進まない場合は、専門家にご相談ください

遺産分割協議が進まない場合は、専門家にご相談ください

相続に関わる手続きには、さまざまな期限・時効が設定されています。税制面での不利益を避け、将来的なトラブルを予防するためにも、できるだけ早期に協議を始めることをおすすめします。

当事務所では、経験豊富な弁護士が、円滑な遺産分割協議の進行をサポートいたします。相続人間の意見の相違や複雑な財産状況などで遺産分割協議が進まない、相続に関する不安や疑問があるという方は、お気軽に当事務所にご相談ください。

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