吹田市・江坂にある大永法律事務所には、「遺産分割の具体的な進め方を知りたい」「相続トラブルを避けるための注意点は?」といった様々なご相談が寄せられています。
そこで今回は、相続人の中に認知症の人がいる場合どうなるのかについて、分かりやすく解説していきたいと思います。
認知症の相続人がいる場合の問題点は?
認知症の相続人がいる場合、以下のような問題が発生する可能性があります。
遺産分割協議ができない
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。認知症により意思能力が低下している相続人がいる場合、有効な合意を得ることが困難になります。
相続放棄ができない
相続放棄は本人の意思表示が必要です。認知症により意思能力が低下している場合、相続放棄の手続きを行うことができません。
限定承認ができなくなる
限定承認は相続人全員で行う必要があります。認知症の相続人がいる場合、他の相続人も限定承認を行うことができなくなる可能性があります。
相続人に認知症の人がいる場合の対処法は?
では、相続人の中に認知症の人がいる場合はどうすればいいのでしょうか?
以下で2つの対処法をご紹介していきます。
対処法1「法定相続分による分割」
認知症の相続人が意思能力を有していないと判断された場合、遺産分割協議を行うことは困難です。このような場合、法定相続分に従って遺産を分割する方法があります。
法定相続分は民法で定められており、相続人の続柄によって以下のように決まります。
■配偶者と子がいる場合
配偶者1/2、子1/2(子が複数いる場合は均等に分割)
■配偶者と親がいる場合
配偶者2/3、親1/3
■配偶者と兄弟姉妹がいる場合
配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
法定相続分による分割のデメリット
法定相続分による分割を行う場合、次のようなデメリットが考えられます。
■不動産の共有問題
法定相続分で不動産を相続すると、相続人全員で共有することになります。売却や賃貸の際に全員の合意が必要となり、認知症の相続人がいる場合は手続きが困難になります。
■預金の相続手続きの停滞
銀行での相続手続きには、通常、相続人全員の合意を示す書類が必要です。認知症の相続人がいる場合、この合意を得ることが難しくなります。
■相続税軽減特例の利用制限
「小規模宅地等の特例」などの相続税軽減措置は、遺産分割協議が整っていることが条件となるため、法定相続分による分割では利用できない可能性があります。
法定相続分による相続が適している場合
以下のようなケースでは、法定相続分による相続を検討します。
・相続財産に不動産が含まれない場合
・認知症の相続人の年齢から、次の相続が近く発生する可能性がある場合
・法定相続分での相続によるデメリットが問題にならない場合
対処法2「成年後見制度の利用」
認知症の相続人がいる場合でも、成年後見制度を利用することで遺産分割協議を行うことが可能になります。
成年後見制度は、判断能力が不十分な方を法律的に支援する制度です。成年後見人等が選任されると、その人が認知症の相続人に代わって遺産分割協議に参加することができます。
成年後見制度利用のデメリット
成年後見制度を利用して相続をする場合、次のようなデメリットが考えられます。
■選任までの時間
後見人の選任には時間がかかる場合があります。
■制度の継続性
一度利用すると、被後見人が亡くなるまで継続します。
■報酬の発生
後見人への報酬を支払い続ける必要があります。
■親族の選任が困難
親族が後見人に選任される可能性は低くなっています。
■柔軟性の欠如
後見人は被後見人の利益を最優先するため、遺産分割協議において希望している内容では通らない場合があります。
成年後見制度を選択するケース
以下のようなケースでは、成年後見制度を選択されることをおすすめします。
・預貯金など財産の管理をしてもらいたい場合
・身上監護をしてもらいたい場合
・介護保険の契約や、必要に応じた介護・医療の契約、施設への入所契約をしてもらいたい場合
・所有不動産を売却する場合
なお、相続に備え、成年後見制度を早めに検討しておくことも重要なポイントとなります。
対応にお困りであれば、当事務所にご相談ください
認知症の相続人がいる場合の相続問題は、法律的にも感情的にも複雑になりがちです。状況によっては、早期の対応が問題解決の鍵となることも多いため、お困りの場合はお早めに専門家に相談されることをおすすめします。
当事務所では、相続問題に関する豊富な経験をもつ弁護士が、依頼者様の状況や家族関係を丁寧に聞き取り、最適な解決策を提案させていただきます。
認知症の相続人がいる場合の相続でお悩みの方は、ぜひ当事務所に、お気軽にお問い合わせください。